
こんにちは。今回は、米国の最新B2Bマーケティングトレンドをもとに、広告業界の構造変化と、私自身が30年近くマーケティングの現場で感じてきた違和感、そして今後の希望についてお話ししたいと思います。
◇「広告は売上に貢献しているのか?」という問い
私はメディア、広告代理店、制作会社でのキャリアを経て、事業会社でマーケティングに携わってきました。長年感じてきたのは、広告ベンダーの多くが「事業にコミットする姿勢」に欠けているということです。
広告キャンペーンやクリエイティブが、どれだけ売上に直結したのか?という視点が希薄で、むしろ「広告賞を取るための作品づくり」に心血を注ぐ姿勢が昔も今も目立っています。例えば、カンヌライオンズなどの受賞歴を誇る一方で、クライアントの事業成長には無関心とまでは行かないまでも、広告会社の事例は広告「作品」前面で正直それが事業にどれだけ貢献しているかには言及されておらず。もしかしたらどう言及したらわからないのかもしれない。マーケット認知が〇〇%UPみたいな云々。。。じゃないんです。結局納品したら、ありがとうございました!以上。みたいな。私に限らずクライアント側・事業会社でマーケティングや、経営戦略に携わる方で話が嚙み合わず苦々しい思いを抱いてきた人は国内外かなり多いです。(笑)
◇海外でも起きている「広告会社離れ」
このような構造的な問題は、海外、特に米国でも顕在化しています。2025年のB2BマーケティングトレンドをまとめたForbesの記事では、企業が広告代理店に求めるものが「クリエイティブ」から「成果」へと大きくシフトしていることが示されています。
特に注目すべきは、以下の3つの流れです:
- AIによるパーソナライズと予測分析の導入
企業は、膨大なデータをリアルタイムで分析し、顧客ごとに最適なコンテンツを届けることに注力しています。これは、従来の「感性頼りのクリエイティブ」からの脱却を意味します。 - インハウス化の加速
私の会社も米国系なのでまさにそうですが、米国のB2B企業では、マーケティング機能の社内化が進んでおり、広告代理店への依存度が低下しています。特に、動画制作やSNS運用などは、社内チームで完結できるようになってきています。ひと昔前でしたら、クオリティ云々…のヤジがプロと呼ばれる方より頂くことはありましたが、ちょっとしたクリエイティブであればそこらへんの「クリエイター」よりも良いものは社内でトレーニングすればできます。(私も一応広告制作会社の「クリエイター」でしたので、完全にテクノロジーが人間のクリエイティブにとって代わる!とは思いたくはないですし、実際にアートや人間の創造性の進化には期待をしています。が、B2Bの世界は商材の魅力の訴求、キーマン抑えて、購買タイミング抑えてプロセスに乗せる、なのでなおさら…) - 成果重視の文化の浸透
「どれだけ売上に貢献したか?」という問いに答えられるマーケティングが求められています。これは、広告代理店にとっては厳しい現実です。
◇数字が語る「広告会社の未来」
米国のB2Bマーケティングエージェンシーのベンチマークレポートによると、2025年の平均売上は1,700万ドルと前年比25.9%増となっています。一見すると好調に見えますが、これは一部の「成果にコミットできる」エージェンシーに限られた話。
実際には、以下のような課題が浮き彫りになっています:
- クライアントの予算圧力の増加
- AI活用による業務効率化への対応遅れ
- インハウスチームとの競合激化
特に、AIによるコンテンツ生成やパーソナライズが進む中で、広告会社の「人間のクリエイティブ」に頼る価値は相対的に低下しています。企業は、ROI(投資対効果)を明確に測定できるマーケティングを求めており、感性や賞レースでは評価されなくなってきているのです。
◇「クリエイター神話」の終焉と、マーケティングの再定義
私は、いわゆる「クリエイター的な人種」が、事業に貢献できないまま自己表現に走る姿勢に、長年疑問を抱いてきましたし、未だにそこから脱却できていない50sで、そこそこ食えている人もたくさん知っているので、どうなのさあなたたち?的な話は酒の席でよくしています(友人でもあるので、喧嘩にならない程度に(笑)。 もちろん、優れたクリエイティブは人の心を動かします。しかし、それが売上やブランド価値にどうつながるのか?という問いに答えられない限り、事業会社・依頼元企業にとっては単なる「コスト」でしかありません。
AIやテクノロジーの進化によって、こうした「ひとりよがりなクリエイティブ」は淘汰されていくでしょう。むしろ、マーケティングは「顧客の課題を解決するための手段」として再定義され、事業成長に直結する活動へと進化していくのです。
◇インハウス化がもたらす希望
ということで、事業会社でマーケティングを専門に10社以上で30年仕事をしてきて、上記の流れと”広告会社”に対する違和感の中で、私はマーケティングチームを事業貢献=売上コミットメントを宣言し、インハウス化を所属してきた各社で進めてきました。2025年の今、私はインハウスのマーケティングチームの可能性に大きな希望と手ごたえを感じています。社内にマーケティング機能を持つことで、事業戦略と営業とマーケティングが一体化し、スピードと柔軟性が格段に向上します。
また、AIツールの活用により、少人数でも高精度なマーケティングが可能になり、外部ベンダーに頼らずとも成果を出せる環境が整いつつあります。これは、企業にとってはコスト削減だけでなく、ブランドの一貫性や顧客理解の深化にもつながります。
と、やや辛辣に広告会社や制作会社について、思いを吐露してしまいましたが、これらが完全に消えることはないと思いたいし、私の故郷の産業でもあるので生き残ってほしいと最後に願いを込めて結びます。ともかく、彼らが生き残るためには、「クリエイティブ」ではなく「成果」にコミットする姿勢が不可欠です。賞レースではなく、クライアントの売上に貢献すること。それが、広告、マーケティングの本質です。
私は、マーケティングが「事業貢献の技術」として再定義される流れを、心から歓迎しています。そして、これまでの経験を活かしながら、テクノロジーと人間の知恵を融合させた新しい事業貢献の形を追求していきたいと思います。ではでは。