2025年10月7日、Precedence Researchの最新レポートによると、世界の製薬市場は今後10年間で急速な成長を遂げ、2034年には3兆300億ドル(約500兆円)規模に達する見通しが示されました。 現在の市場規模は1兆7700億ドルで、2024年からの年平均成長率(CAGR)は6.15%と予測されていますが、特にアジア太平洋地域が最も高い成長率を示すとされ(^^)good news! 本件ニュースの発信元である北米は依然として最大の市場シェア(42%)を保持しているということが述べられています。 主なトレンドと注目点: この成長の背景には、慢性疾患の増加、医療アクセスの拡大、革新的治療法への需要の高まりがあります。製薬企業は、研究開発投資の強化とともに、デジタル技術やAIの活用による効率化を進めているというのは以前の私の記事でも言及している通りです。 読者の皆様のように戦略的視点を持つマーケターにとって、こうしたマクロトレンドは事業開発や市場参入戦略の重要な指針となるでしょう。特にアジア市場の成長は、今後のパートナーシップや製品展開の好機を示唆しています! ということで、クイックニュースでした!
創薬・医薬品・製薬業界
こちらがご依頼の内容をもとに構成した、約4000文字の記事です。タイトルとともに、製薬業界のトレンドを数字とともにわかりやすく、フレンドリーな語り口でまとめました。 肥満症薬で世界を席巻するノボノルディスクとイーライリリー──2030年、製薬業界の頂点に立つのは? デンマークのノボノルディスクと米国のイーライリリー。この2社が開発・販売するGLP-1受容体作動薬は、肥満症治療の新たなスタンダードとして世界中で爆発的な人気を誇っています。筆者自身もノボ社の経口GLP-1薬「リベルサス」にお世話になった経験があり、その効果と利便性には感銘を受けました。 かつて筆者が在籍していたフランスのサノフィでは、2型糖尿病治療薬の拡販に従事していましたが、当時はインスリン注射の適応拡大に注力しており、肥満症市場には積極的に参入していない印象でした。マーケティングとセールスのプロとしては、なぜこの成長市場に踏み込まないのかと歯がゆい思いを抱いたものです。 そんな中、ノボとリリーは見事に時流を捉え、戦略的な製品ポートフォリオを構築。肥満症と糖尿病という巨大市場で圧倒的な存在感を示しています。両社の躍進は、製薬業界の構造そのものを変えるインパクトを持っていると言えるでしょう。 ◇2030年、売上高で世界トップへ Evaluate Pharmaの最新予測によると、2030年にはイーライリリーが世界最大の処方薬メーカーとなり、売上高は1,130億ドル(約17兆円)に達する見込みです。ノボノルディスクもそれに続き、840億ドル(約12.6兆円)と、現在の製薬業界トップ企業を大きく上回る成長を遂げると予測されています。 この成長を牽引するのが、両社のGLP-1薬です。2030年にはGLP-1関連薬が全処方薬売上の約9%を占めるとされており、まさに「カテゴリーを超えた存在」となっています。 イーライリリーの「モウンジャロ」は2030年に360億ドルの売上で世界一の薬剤となる見込みで、肥満症薬「ゼップバウンド」も255億ドルで第3位にランクインすると予測されています。一方、ノボノルディスクの「オゼンピック」は244億ドル、「ウゴービ」は181億ドル、次世代肥満症薬「カグリセマ」は152億ドルと、いずれもトップ10入りを果たす見通しです。 ◇GLP-1薬の市場規模は驚異の4700億ドルへ I-MAKのレポートによれば、ノボとリリーの5つのGLP-1薬(オゼンピック、ウゴービ、リベルサス、ゼップバウンド、モウンジャロ)は、2030年までに累計4,700億ドル(約70兆円)もの売上を生み出すと推定されています。これは、過去20年間のベストセラー薬を凌駕する規模であり、GLP-1薬がいかに市場を席巻しているかを物語っています。 ゼップバウンドは発売から5年間で660億ドルを稼ぐとされており、これはプロザック(40億ドル)やバイアグラ(70億ドル)を大きく上回る数字です。GLP-1薬は、もはや「肥満症治療薬」という枠を超え、心血管疾患や腎疾患など多領域への適応拡大も進んでいます。 ◇ノボノルディスクに訪れた試練──急成長の代償 こうした華々しい成長の裏で、ノボノルディスクは大きな試練にも直面しています。2021年に「ウゴービ」の成功で欧州最大の企業となったノボですが、米国市場での激しい競争や後発品の登場により、2024年6月のピークから、今年2025年8月までの時価総額の下落幅は4,000億ドル以上に達しています。 トムソン・ロイター社の記事によると、デンマークのカルンボーでは、ノボの工場建設ラッシュにより街が活気づいていますが、同時に5,000人規模の国内人員削減が予定されており、地元経済への影響が懸念されているらしく、副市長のティナ・ベック=ニルソン氏は「建設が終わった後、これらの家がゴーストハウスにならないか心配です」と語っているそうです。 ノボはグローバルで9,000人の人員削減を計画しており、その半数以上がデンマーク国内です。新CEOのもと、事業構造の再編と意思決定の迅速化を進め、糖尿病と肥満症領域へのリソース集中を図るとしています。...
今回は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が発表した「創薬ベンチャーエコシステム強化事業(創薬ベンチャー公募)」第11回の公募について、少し熱く語らせていただきます。 実は昨日、AMEDからこの公募に関するリリースが出されました。創薬ベンチャーの支援を目的としたこの事業は、非臨床試験から第2相臨床試験までの段階にある企業を対象に、認定ベンチャーキャピタル(VC)による出資を条件に補助金を交付するというものです。海外展開も視野に入れた支援内容となっており、外国法人の日本子会社も対象になるなど、グローバル志向の企業にとっては大きなチャンスです。 創薬ベンチャー、なぜ日本では育ちにくい? 私自身、創薬という言葉に触れたのは製薬系のニュースやメディアを通じてでしたが、米国や中国、韓国の動向を見ていると、日本の立ち位置に危機感を覚えます。米国では、創薬ベンチャーが次々と革新的な治療薬を生み出し、ライセンスアウトによって巨額の契約を結んでいます。 たとえば、2023年には米Nimbus Therapeuticsが武田薬品にライセンスアウトしたTYK2阻害剤が、最大60億ドル規模の契約となりました。これはもう、桁違いのスケールです。 一方、日本では創薬ベンチャーの資金調達環境が厳しく、VCの数も限られています。大学発ベンチャーや研究機関との連携も進んではいますが、米国のようにエコシステムが成熟しているとは言い難いのが現状です。 だからこそ、今回のAMEDの取り組みは本当に応援したいです。もっともっと!と声を大にして言いたいくらいです。 ◇世界のライセンスイン・ライセンスアウト事情 製薬業界では、近年自社研究開発から外部技術の導入へとシフトが進んでいます。特にMEGAファーマと呼ばれる大手製薬企業は、創薬ベンチャーからのライセンスインを積極的に行っています。これは、開発リスクを分散し、スピード感を持って市場投入するための戦略です。 以下は、最近の主なライセンス契約の例です: これらの契約は、創薬ベンチャーの成長を加速させると同時に、大手企業のパイプライン強化にも貢献しています。日本企業もこの流れに乗るべきですが、現状ではライセンスインの件数も規模も海外に比べて見劣りしてしまいます。 ◇アジアの台頭:中国・韓国の創薬ベンチャー事情 中国では、政府主導で創薬ベンチャー支援が進んでおり、香港や上海の証券市場ではバイオ企業の上場が相次いでいます。韓国も同様に、国家戦略としてバイオ産業を育成しており、Samsung BiologicsやCelltrionなどが世界市場で存在感を示しています。 それに比べて日本はどうでしょうか。正直なところ、「失われた30年」の延長線上にあるように感じてしまいます。自動車産業は海外企業に買収され、家電は衰退し、製造業全体が秋風にさらされている中で、製薬業界だけはその波に飲まれないよう、創薬ベンチャーの育成に本気で取り組む必要があると思います。 ◇AMEDの公募が意味するもの...
創薬の世界は、まるで複雑なパズルのようです。ターゲットとなる疾患や分子を見つけるところから始まり、臨床試験を経て、最終的に患者の手元に届くまでには、長い年月と莫大なコストがかかります。特に近年では、低分子・中分子・高分子といったモダリティの多様化により、創薬のアプローチも複雑化しています。そんな中で、創薬の成功率を高め、期間を短縮し、コストを削減する鍵となるのが「臨床開発におけるデータとテクノロジーの活用」です。 ◇創薬の平均的な期間とコスト:モダリティ別・疾患別の傾向 創薬は一般的に以下のステップを経て進みます: ◇創薬にかかる平均期間◇ ◇創薬コストの目安(1製品あたり) 疾患別では、がんや希少疾患は患者数が限られるため、臨床試験の設計が難しく、コストが高騰しがちです。一方、糖尿病や高血圧などの慢性疾患は患者数が多く、試験設計が比較的容易ですが、競合製品が多いため差別化が求められます。 ◇ 臨床開発の成功を左右する「サイト・KOL・患者選定」 創薬の中でも、臨床開発は最も時間とコストがかかるフェーズです。特にPhase 2・3では、数百〜数千人の患者を対象に試験を行う必要があり、適切な病院(サイト)と責任医師(KOL)、そして患者のリクルーティングが成功の鍵を握ります。なぜ「適切なサイト・KOL・患者選定」が重要なのか? ◇ビッグデータとAIによる臨床試験設計の革新ここで登場するのが「世界中のサイト・病院・KOL・患者データベース」と、それを解析するAIや機械学習の技術です。これらを活用することで、以下のようなメリットが得られます: ◇ 臨床開発の短縮によるコスト削減効果 臨床試験の期間を1年短縮できた場合、どれくらいのコスト削減につながるのでしょうか? ◇創薬における「データとテクノロジー」の重要性 創薬の初期段階では、ターゲット分子の選定やスクリーニングにAIが活用されるようになっています。例えば、疾患の原因となる遺伝子やタンパク質を解析し、最適な化合物を設計するプロセスでは、膨大な論文データやゲノム情報が活用されます。しかし、創薬の成功率を最も左右するのは「臨床開発」です。ここでのデータ活用こそが、創薬の未来を変える鍵となります。 ◇創薬の未来は「臨床開発のデータ活用」にあり!...
昨日、2025年9月26日、米国大統領ドナルド・トランプ氏は自身のSNS「Truth Social」にて、次のような投稿を行いました。 “Starting October 1st, 2025, we will be imposing a 100% Tariff on any branded or...
こんにちは。今回は、米国の最新B2Bマーケティングトレンドをもとに、広告業界の構造変化と、私自身が30年近くマーケティングの現場で感じてきた違和感、そして今後の希望についてお話ししたいと思います。 ◇「広告は売上に貢献しているのか?」という問い 私はメディア、広告代理店、制作会社でのキャリアを経て、事業会社でマーケティングに携わってきました。長年感じてきたのは、広告ベンダーの多くが「事業にコミットする姿勢」に欠けているということです。 広告キャンペーンやクリエイティブが、どれだけ売上に直結したのか?という視点が希薄で、むしろ「広告賞を取るための作品づくり」に心血を注ぐ姿勢が昔も今も目立っています。例えば、カンヌライオンズなどの受賞歴を誇る一方で、クライアントの事業成長には無関心とまでは行かないまでも、広告会社の事例は広告「作品」前面で正直それが事業にどれだけ貢献しているかには言及されておらず。もしかしたらどう言及したらわからないのかもしれない。マーケット認知が〇〇%UPみたいな云々。。。じゃないんです。結局納品したら、ありがとうございました!以上。みたいな。私に限らずクライアント側・事業会社でマーケティングや、経営戦略に携わる方で話が嚙み合わず苦々しい思いを抱いてきた人は国内外かなり多いです。(笑) ◇海外でも起きている「広告会社離れ」 このような構造的な問題は、海外、特に米国でも顕在化しています。2025年のB2BマーケティングトレンドをまとめたForbesの記事では、企業が広告代理店に求めるものが「クリエイティブ」から「成果」へと大きくシフトしていることが示されています。 特に注目すべきは、以下の3つの流れです: ◇数字が語る「広告会社の未来」 米国のB2Bマーケティングエージェンシーのベンチマークレポートによると、2025年の平均売上は1,700万ドルと前年比25.9%増となっています。一見すると好調に見えますが、これは一部の「成果にコミットできる」エージェンシーに限られた話。 実際には、以下のような課題が浮き彫りになっています: 特に、AIによるコンテンツ生成やパーソナライズが進む中で、広告会社の「人間のクリエイティブ」に頼る価値は相対的に低下しています。企業は、ROI(投資対効果)を明確に測定できるマーケティングを求めており、感性や賞レースでは評価されなくなってきているのです。 ◇「クリエイター神話」の終焉と、マーケティングの再定義 私は、いわゆる「クリエイター的な人種」が、事業に貢献できないまま自己表現に走る姿勢に、長年疑問を抱いてきましたし、未だにそこから脱却できていない50sで、そこそこ食えている人もたくさん知っているので、どうなのさあなたたち?的な話は酒の席でよくしています(友人でもあるので、喧嘩にならない程度に(笑)。 もちろん、優れたクリエイティブは人の心を動かします。しかし、それが売上やブランド価値にどうつながるのか?という問いに答えられない限り、事業会社・依頼元企業にとっては単なる「コスト」でしかありません。 AIやテクノロジーの進化によって、こうした「ひとりよがりなクリエイティブ」は淘汰されていくでしょう。むしろ、マーケティングは「顧客の課題を解決するための手段」として再定義され、事業成長に直結する活動へと進化していくのです。 ◇インハウス化がもたらす希望 ということで、事業会社でマーケティングを専門に10社以上で30年仕事をしてきて、上記の流れと”広告会社”に対する違和感の中で、私はマーケティングチームを事業貢献=売上コミットメントを宣言し、インハウス化を所属してきた各社で進めてきました。2025年の今、私はインハウスのマーケティングチームの可能性に大きな希望と手ごたえを感じています。社内にマーケティング機能を持つことで、事業戦略と営業とマーケティングが一体化し、スピードと柔軟性が格段に向上します。...
今日は中国の製薬業界に関するAI創薬の進展、新薬データ保護制度の導入、そして米中関係が製薬業界に与える影響などホットな話題をお届けします。 ◇AI創薬が本格始動、DeepSeek社が注目の的に 中国ではAIを活用した創薬が急速に進化しています。2024年の医療AI市場は約192億ドルに達し、2030年には数千億ドル規模になると予測されています。この成長の中心にいるのが、生成AI技術をオープンソース化したDeepSeek社。彼らの技術は、臨床データや遺伝子情報を活用したターゲット選定に革命をもたらしており、研究者が自由にカスタマイズできる環境を提供しています。 米国ではOpenAIが先行していましたが、中国は膨大な人口データと政府の支援を武器に、独自のAI創薬エコシステムを構築中。今後は、AIによる創薬スピードの加速とコスト削減が期待されています。 ◇新薬データ保護制度が年内施行へ 長らく議論されてきた中国の新薬データ保護制度が、ついに実現に向けて動き出しました。2025年3月、中国国家薬品監督管理局(NMPA)は「药品试验数据保护实施办法(征求意见稿)」を公表し、新薬に対して一定期間、ジェネリック薬の承認を制限する方針を示しました。 この制度は、革新的な新薬の開発を促進するための重要なステップ。特許期間の延長制度と並び、製薬企業にとっては知的財産の保護と収益確保の両面でメリットがあります。米国でも同様の制度が既に存在しており、中国がこれに追随することで、グローバルな競争力が高まると見られています。 ◇米中関係と製薬業界:緊張と依存のはざまで 米国ではトランプ政権が再び中国依存の医薬品供給に懸念を示しており、国内製造への回帰を主張しています。一部報道では、アモキシシリンの原料の約80%を中国が供給しているとの指摘もあり、米中間の医薬品サプライチェーンが政治的な緊張の火種となっています。 一方、中国国内では江蘇省が医薬品製造の中心地として台頭。売上高4億円以上の製薬企業が集中しており、技術力・生産力ともに他省を引き離しています。これは、グローバル市場における中国の存在感をさらに高める要因となっています。 ◇日本企業への影響も:アステラス社員に実刑判決 その一方で・・・中国でアステラス製薬の社員がスパイ容疑で実刑判決を受けるという衝撃的なニュースも報じられました。背景には、歴史問題を利用した中国政府のナショナリズム動員や、映画『731部隊』の大ヒットなどがあり、日本企業にとっては経済活動と安全保障の両面でリスクが高まっています。 このような状況下では、製薬業界に限らず、日中間のビジネスにおける慎重な対応が求められます。 中国の製薬業界は、AI技術の導入と政策改革によって、グローバル市場での競争力を急速に高めていますが、米中関係によるサプライチェーンの変化や、日本企業のリスク管理と対応策などによっては、その成長に影響があると考えます。
大きなニュースが入ってきました。本日2025年9月22日、持田製薬と伊藤忠商事が、ジェネリック医薬品大手を傘下に持つアンドファーマにそれぞれ20%出資するというニュースが日経で報じられましたのを目にしました。これは単なる資本提携にとどまらず、日本の医薬品製造体制の再構築、そして商社の製薬業界への本格参入という大きな転換点を示しています。 医薬品供給の危機とジェネリックへの期待 近年、薬剤の供給不足が全国的に問題となっています。とくに後発医薬品(ジェネリック)の製造現場では、品質管理や人材不足、設備老朽化などが重なり、安定供給が困難になっているケースも少なくありません。私がかつて所属していたフランスサノフィー社と日医工がお互い出資し取り組んだ合弁会社・製造プロジェクトも、品質の課題から解消されたのが数年前。状況はあんまり好転していない体感です。 一方で、国の医療費抑制政策により、ジェネリック医薬品の使用促進はますます加速しています。厚生労働省は数量ベースで80%以上のジェネリック使用を目標に掲げ、医療機関や薬局にも積極的な導入を促しています。高齢化が進む日本では、医療費の増大が避けられず、ジェネリックの普及は財政健全化の鍵となるのです。 伊藤忠の初参入と商社の新たな役割 今回の伊藤忠によるアンドファーマへの出資は、同社にとって製薬業界初の本格的な資本参加です。伊藤忠はこれまで繊維、食品、エネルギーなど多岐にわたる分野でグローバルに展開してきましたが、医薬品分野ではサプライチェーンの知見を活かし、原料調達や物流、流通網の構築に貢献する意向を示しています。 持田製薬は研究開発力を提供し、アンドファーマの製造・品質管理体制を強化。両社の連携により、ジェネリック医薬品の安定供給体制が構築されることが期待されています。 商社による製薬業界への投資は、三井物産や三菱商事が先行しており、三井物産は武田薬品や中外製薬との協業、三菱商事はバイオベンチャーへの出資などを通じて、創薬や製造支援に積極的です。今回の伊藤忠の動きは、商社全体が医薬品分野に本格的に関与していく流れを加速させる可能性があります。 CDMO再編と創薬の未来 アンドファーマは日医工、共和薬品工業、T’sグループを傘下に持つ持株会社で、国内ジェネリック医薬品市場において大きな存在感を示しています。CDMO(医薬品受託製造開発機関)としての機能も強化されつつあり、製造受託だけでなく、製剤設計や品質保証までを担う体制が整いつつあります。 しかし、ジェネリックだけでは日本の製薬産業の未来は描けません。世界をリードする創薬力を育てるには、基礎研究から臨床開発、製造、販売までを一貫して支える体制が必要です。ここにこそ、資金力とネットワークを持つ商社の役割が問われます。 たとえば、三井物産は米国の創薬ベンチャーへの出資を通じて、革新的な治療法の開発に関与しています。また、三菱商事はAI創薬やゲノム編集技術を活用するスタートアップとの連携を進めています。こうした動きは、日本の製薬企業がグローバル市場で競争力を持つための重要な布石となるでしょう。 日本経済へのインパクトと今後の指針 医療財政のひっ迫は避けられない現実です。高齢化に伴う医療ニーズの増加、慢性疾患の増加、医療技術の高度化により、医療費は今後も右肩上がりに増加する見込みです。ジェネリック医薬品の普及はその抑制策の一つですが、同時に創薬力の強化による高付加価値医薬品の輸出も、日本経済にとって重要な柱となります。 日本はかつて「失われた30年」と呼ばれる経済停滞期を経験しましたが、今こそ製薬産業を新たな成長エンジンと位置づけ、国を挙げて支援するべき時だと私は思います。商社、製薬企業、研究機関、政府が連携し、創薬から製造、流通までを支えるエコシステムを構築することで、日本発の革新的医薬品が世界を席巻する未来も夢ではありません。 商社×製薬=新たな産業創出へ 今回の伊藤忠と持田製薬によるアンドファーマへの出資は、医薬品供給の安定化だけでなく、商社が製薬業界に本格参入する象徴的な出来事です。ジェネリックの供給体制強化とともに、創薬分野への投資が進めば、日本の製薬産業は再び世界の舞台で輝く可能性を秘めています。...
私が現在どっぷり漬かっている製薬業界ですが、これまで働いてきたIT、金融業界はもちろん、特にB2Bマーケティングの世界は2025年に入りさらに進化を遂げています。かつては展示会や営業訪問が主流だったこの領域も、今ではAI、データ分析、動画、コミュニティといったテクノロジーが中心に。今回は、海外の最新事例を交えながら、今注目すべきマーケティングテクノロジーとそのユースケースをわかりやすくご紹介します! 1. AIによるハイパーパーソナライゼーション 2025年のB2Bマーケティングで最も注目されているのが、AIを活用した「ハイパーパーソナライゼーション」です。従来の「業界別」「役職別」といったセグメントを超え、個々の購買履歴、閲覧傾向、興味関心に基づいて、リアルタイムで最適なコンテンツを届ける技術が進化しています。例えば、 このような技術により、B2Bでも「まるで自分のために作られた」ような体験が可能になっています2。 2. 動画×B2B:短尺・パーソナルが鍵 B2Cではすでに主流となっている動画マーケティングですが、2025年はB2Bでも急速に浸透中。特に「短尺」「パーソナライズ」「人間味」がキーワードです。例えば、 動画は「人間らしさ」を伝える最強ツール。B2Bでも感情に訴えるマーケティングが求められています。 3. データプライバシーとファーストパーティデータの活用 GDPRやCCPAなどの規制強化により、2025年は「ファーストパーティデータ」の重要性がさらに高まっています。つまり、自社で直接収集したデータをいかに安全に、かつ効果的に活用するかが鍵。例えば、 データの「質」と「信頼性」が、マーケティング成果を左右する時代です。 4. 自動化とワークフロー最適化 マーケティング業務の効率化も、2025年の重要テーマ。AIによる自動化は、単なる作業の代替ではなく「戦略的な時間の創出」に貢献しています。例えば、 「人間がやるべきこと」に集中できる環境づくりが、成果を生む鍵です3。...
今回は、2030年の処方薬売上予測をもとに、製薬業界のトップ10企業がどう変わるのかを見ていきましょう。GLP-1製剤の急成長や、特許切れによる影響など、ランキングに大きく関わる要素が盛りだくさんです。 圧倒的1位はイーライリリー社!売上3倍の大躍進 まず注目すべきは、イーライリリー社の快進撃。2030年には処方薬の年間売上がなんと1,126億ドルに達すると予測されています。2024年の売上が407億ドルだったことを考えると、実に3倍近い伸び。年平均成長率(CAGR)で見ると18%超という驚異的な数字です。2024年時点では11位だったリリー社が、2030年には堂々の1位に。まさに「大躍進」と言えるでしょう。 2位はノボノルディスク社、GLP-1製剤が成長の原動力 続いて2位にランクインするのがノボノルディスク社。2024年には10位だった同社も、GLP-1製剤の好調な売上に支えられて急成長。リリー社と並び、GLP-1市場の勝者として2030年の製薬業界を牽引する存在になると見られています。 特許切れが明暗を分ける:オプジーボ・エリキュース・キイトルーダ 一方で、特許切れによる売上減少がランキングに影響を与えている企業もあります。たとえば、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社は、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」や抗凝固薬「エリキュース」の特許切れが響き、トップ10から脱落。 ファイザーも2024年には5位でしたが、2030年には10位に後退。しかも、2024年から2030年までのCAGRはマイナス0.6%と予測されており、トップ10企業の中で唯一のマイナス成長になる可能性があります。 メルク社も「キイトルーダ」の特許切れが影響し、ランキングを5つ落とす見込みです。特許の壁は、やはり大きいですね。 ロッシュ社の戦略が光る:ブロックバスターなしでも5位に もうひとつ興味深いのが、5位にランクインしているロッシュ社。実は、製品別売上トップ10に入っている薬はひとつもありません。それでも、トップ10圏外の製品を幅広く展開し、全体として大きな収益を上げています。これは、一つの大型製品に頼らず、バランスの取れたポートフォリオで勝負するというロッシュの戦略が功を奏している証拠ですね。 ランキングはまだまだ流動的 最後に忘れてはいけないのが、政策の影響。米国では、トランプ政権による薬価引き下げの圧力や、医薬品への品目別関税などが導入される可能性もあり、ランキングの変動要因として注目されています。 GLP-1製剤の台頭、特許切れの影響、そして企業ごとの戦略の違い。2030年の製薬業界は、まさに変革の真っ只中です。次回は、各社の製品ポートフォリオや新薬開発の動向について、さらに深掘りしていきますのでお楽しみに! *出展Evaluate社 ワールドプレビューレポート2025