今回は、2030年の処方薬売上予測をもとに、製薬業界のトップ10企業がどう変わるのかを見ていきましょう。GLP-1製剤の急成長や、特許切れによる影響など、ランキングに大きく関わる要素が盛りだくさんです。 圧倒的1位はイーライリリー社!売上3倍の大躍進 まず注目すべきは、イーライリリー社の快進撃。2030年には処方薬の年間売上がなんと1,126億ドルに達すると予測されています。2024年の売上が407億ドルだったことを考えると、実に3倍近い伸び。年平均成長率(CAGR)で見ると18%超という驚異的な数字です。2024年時点では11位だったリリー社が、2030年には堂々の1位に。まさに「大躍進」と言えるでしょう。 2位はノボノルディスク社、GLP-1製剤が成長の原動力 続いて2位にランクインするのがノボノルディスク社。2024年には10位だった同社も、GLP-1製剤の好調な売上に支えられて急成長。リリー社と並び、GLP-1市場の勝者として2030年の製薬業界を牽引する存在になると見られています。 特許切れが明暗を分ける:オプジーボ・エリキュース・キイトルーダ 一方で、特許切れによる売上減少がランキングに影響を与えている企業もあります。たとえば、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社は、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」や抗凝固薬「エリキュース」の特許切れが響き、トップ10から脱落。 ファイザーも2024年には5位でしたが、2030年には10位に後退。しかも、2024年から2030年までのCAGRはマイナス0.6%と予測されており、トップ10企業の中で唯一のマイナス成長になる可能性があります。 メルク社も「キイトルーダ」の特許切れが影響し、ランキングを5つ落とす見込みです。特許の壁は、やはり大きいですね。 ロッシュ社の戦略が光る:ブロックバスターなしでも5位に もうひとつ興味深いのが、5位にランクインしているロッシュ社。実は、製品別売上トップ10に入っている薬はひとつもありません。それでも、トップ10圏外の製品を幅広く展開し、全体として大きな収益を上げています。これは、一つの大型製品に頼らず、バランスの取れたポートフォリオで勝負するというロッシュの戦略が功を奏している証拠ですね。 ランキングはまだまだ流動的 最後に忘れてはいけないのが、政策の影響。米国では、トランプ政権による薬価引き下げの圧力や、医薬品への品目別関税などが導入される可能性もあり、ランキングの変動要因として注目されています。 GLP-1製剤の台頭、特許切れの影響、そして企業ごとの戦略の違い。2030年の製薬業界は、まさに変革の真っ只中です。次回は、各社の製品ポートフォリオや新薬開発の動向について、さらに深掘りしていきますのでお楽しみに! *出展Evaluate社 ワールドプレビューレポート2025
処方薬市場
今回は、Evaluate社のデータベースから、2030年に向けた処方薬・製品の売上予測とランキングをご紹介します。スライドには、左から順に売上トップの薬が並んでいて、紫色のバーが2024年の実績、青色のバーが2030年の予測を示しています。見比べてみると、売上がグンと伸びている薬もあれば、ちょっと勢いが落ちているものもありますね。 Evaluateのデータは、四半期ごとの予測に加えて、臨床試験や規制の動きなど、リアルタイムに近い市場の変化を反映しているのが特徴。だからこそ、今後の医薬品業界の流れをしっかりつかむことができるんです。 さて、ランキングのトップ3に注目してみましょう。なんとそのうち2つは、アメリカのイーライリリー社が手がけるGLP-1受容体作動薬。糖尿病や肥満症の治療に使われる「マンジャロ」が第1位、「ゼップバウンド」が第3位にランクインしています。2030年にはそれぞれ362億ドル、255億ドルの売上が予測されていて、合わせると600億ドル超え!すごいですね。 さらに、GLP-1製剤としては、ノボノルディスク社の「オゼンピック」(第5位)と「ウィゴビー」(第6位)も含めると、合計で970億ドルを超える見込み。つまり、GLP-1系の薬が2030年の処方薬市場をリードすることは間違いなさそうです。 GLP-1以外では、アッヴィ社の「スキリージ」が第2位に。乾癬や炎症性腸疾患などに使われる薬で、売上は266億ドルの予測です。そして第4位には、サノフィ社の「デュピクセント」がランクイン。こちらは喘息やアトピー性皮膚炎の治療薬で、251億ドルの売上が見込まれています。どちらも幅広い疾患に対応しているので、今後も売上アップが期待されますね。 もうひとつ注目したいのが、第8位に入ったギリアド・サイエンシズ社の「ビクタルビ」。HIV治療薬として、159億ドルの売上が予測されていて、メガファーマ以外で唯一トップ10入りしているのがポイントです。2025年時点でも第7位に入っているので、2030年まで安定して上位に残りそうです。 そして、現在トップの「キイトルーダ」(メルク社)ですが、2028年に特許切れを迎えるため、今後は売上が徐々に減っていく見込み。2025年が最後の“トップの年”になる可能性が高いですが、メルク社は適応症の拡大や皮下投与製剤の開発、新しい市場への展開など、売上減少を抑えるための戦略をしっかり進めています。 ちなみに、同じく免疫チェックポイント阻害剤の「オプジーボ」(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社)は、今年からトップ10圏外に。特許切れを見据えた中長期的な戦略が、今後ますます重要になってきそうです。 がん領域では、ジョンソン・アンド・ジョンソン社の「ダラザレックス」が、多発性骨髄腫の標準治療薬として、2030年に向けて堅調な売上を維持する見込みです。 以上、2030年に向けた処方薬の売上動向をざっくりご紹介しました。次回は、2030年のグローバル製薬企業ランキングについて、さらに詳しく見ていきますので、お楽しみに!