創薬

今回は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が発表した「創薬ベンチャーエコシステム強化事業(創薬ベンチャー公募)」第11回の公募について、少し熱く語らせていただきます。 実は昨日、AMEDからこの公募に関するリリースが出されました。創薬ベンチャーの支援を目的としたこの事業は、非臨床試験から第2相臨床試験までの段階にある企業を対象に、認定ベンチャーキャピタル(VC)による出資を条件に補助金を交付するというものです。海外展開も視野に入れた支援内容となっており、外国法人の日本子会社も対象になるなど、グローバル志向の企業にとっては大きなチャンスです。 創薬ベンチャー、なぜ日本では育ちにくい? 私自身、創薬という言葉に触れたのは製薬系のニュースやメディアを通じてでしたが、米国や中国、韓国の動向を見ていると、日本の立ち位置に危機感を覚えます。米国では、創薬ベンチャーが次々と革新的な治療薬を生み出し、ライセンスアウトによって巨額の契約を結んでいます。 たとえば、2023年には米Nimbus Therapeuticsが武田薬品にライセンスアウトしたTYK2阻害剤が、最大60億ドル規模の契約となりました。これはもう、桁違いのスケールです。 一方、日本では創薬ベンチャーの資金調達環境が厳しく、VCの数も限られています。大学発ベンチャーや研究機関との連携も進んではいますが、米国のようにエコシステムが成熟しているとは言い難いのが現状です。 だからこそ、今回のAMEDの取り組みは本当に応援したいです。もっともっと!と声を大にして言いたいくらいです。 ◇世界のライセンスイン・ライセンスアウト事情 製薬業界では、近年自社研究開発から外部技術の導入へとシフトが進んでいます。特にMEGAファーマと呼ばれる大手製薬企業は、創薬ベンチャーからのライセンスインを積極的に行っています。これは、開発リスクを分散し、スピード感を持って市場投入するための戦略です。 以下は、最近の主なライセンス契約の例です: これらの契約は、創薬ベンチャーの成長を加速させると同時に、大手企業のパイプライン強化にも貢献しています。日本企業もこの流れに乗るべきですが、現状ではライセンスインの件数も規模も海外に比べて見劣りしてしまいます。 ◇アジアの台頭:中国・韓国の創薬ベンチャー事情 中国では、政府主導で創薬ベンチャー支援が進んでおり、香港や上海の証券市場ではバイオ企業の上場が相次いでいます。韓国も同様に、国家戦略としてバイオ産業を育成しており、Samsung BiologicsやCelltrionなどが世界市場で存在感を示しています。 それに比べて日本はどうでしょうか。正直なところ、「失われた30年」の延長線上にあるように感じてしまいます。自動車産業は海外企業に買収され、家電は衰退し、製造業全体が秋風にさらされている中で、製薬業界だけはその波に飲まれないよう、創薬ベンチャーの育成に本気で取り組む必要があると思います。 ◇AMEDの公募が意味するもの...
創薬の世界は、まるで複雑なパズルのようです。ターゲットとなる疾患や分子を見つけるところから始まり、臨床試験を経て、最終的に患者の手元に届くまでには、長い年月と莫大なコストがかかります。特に近年では、低分子・中分子・高分子といったモダリティの多様化により、創薬のアプローチも複雑化しています。そんな中で、創薬の成功率を高め、期間を短縮し、コストを削減する鍵となるのが「臨床開発におけるデータとテクノロジーの活用」です。 ◇創薬の平均的な期間とコスト:モダリティ別・疾患別の傾向 創薬は一般的に以下のステップを経て進みます: ◇創薬にかかる平均期間◇ ◇創薬コストの目安(1製品あたり) 疾患別では、がんや希少疾患は患者数が限られるため、臨床試験の設計が難しく、コストが高騰しがちです。一方、糖尿病や高血圧などの慢性疾患は患者数が多く、試験設計が比較的容易ですが、競合製品が多いため差別化が求められます。 ◇ 臨床開発の成功を左右する「サイト・KOL・患者選定」 創薬の中でも、臨床開発は最も時間とコストがかかるフェーズです。特にPhase 2・3では、数百〜数千人の患者を対象に試験を行う必要があり、適切な病院(サイト)と責任医師(KOL)、そして患者のリクルーティングが成功の鍵を握ります。なぜ「適切なサイト・KOL・患者選定」が重要なのか? ◇ビッグデータとAIによる臨床試験設計の革新ここで登場するのが「世界中のサイト・病院・KOL・患者データベース」と、それを解析するAIや機械学習の技術です。これらを活用することで、以下のようなメリットが得られます: ◇ 臨床開発の短縮によるコスト削減効果 臨床試験の期間を1年短縮できた場合、どれくらいのコスト削減につながるのでしょうか? ◇創薬における「データとテクノロジー」の重要性 創薬の初期段階では、ターゲット分子の選定やスクリーニングにAIが活用されるようになっています。例えば、疾患の原因となる遺伝子やタンパク質を解析し、最適な化合物を設計するプロセスでは、膨大な論文データやゲノム情報が活用されます。しかし、創薬の成功率を最も左右するのは「臨床開発」です。ここでのデータ活用こそが、創薬の未来を変える鍵となります。 ◇創薬の未来は「臨床開発のデータ活用」にあり!...